Re: 6月20日のアオダス情報(梅雨らしい降水とは?)
送信時刻:2002年6月23日 01:33
青レーダー清水くんへ
Cc: 研究室のみなさま
篠田です。
中国から帰国していきなりワールドカップ観戦というハードな日程
をこなしたせいか(笑)、少々体調不良... 明日は動員令がかかっ
ている大学行事ですが、参加できるほど体力&気力が復帰するか?
それにしてもワールドカップのライヴ観戦はすごかったです。
とにかく会場の雰囲気には圧倒されました。常に応援歌(大脱走)
を歌っているイングランドサポ、チャンスとみるや勝手に盛り上が
る(周囲を盛り上げる人がいる)ブラジルサポ。篠田はイングラン
ド5番ファーディナルドのユニホームが欲しかったのですが、無か
ったのでミーハーぶりを発揮してベッカムのレプユニを購入...
アホデスネ...
さて、本題。清水くんからの概況報告はネタとしては面白いですよ
〜。上田先生からのコメントが欲しいところです。篠田としては、
現時点で現象に対する仮説を立てられないでいますが、仮説に至る
矛盾点を列挙しておくことは悪くないと思いますので、コメントし
ます。
shimizu>> 今回のケースで特徴的だったのは、
shimizu>> 下層で明瞭な収束も見られず(ガストもでていない)
shimizu>> 風だけをみると、なんだか層状エコーのように
shimizu>> (乱れが見られないという意味で)
shimizu>> 一様に南西風場であった。つまり
shimizu>> ハッキリした対流性エコーの特徴が
shimizu>> 見られなかった事だと思います。
shimizu>>
shimizu>> これだけ、下層の収束が明瞭でないのに、
shimizu>> 落雷を伴うような、激しい降水システム
shimizu>> (cold rain プロセス)になれたのは
shimizu>> なぜなんでしょうか?(これが「梅雨らしさ」なのでしょうか?)
shimizu>> 興味深いです。
まず、何人かの方(含む上田先生)とは議論した内容ですが、これ
まで考えられていた(アメリカ的)対流雲の発達過程とアジア的な
対流雲の発達過程をまとめてみましょう。
(1) アメリカ的対流雲の発達過程
中層が乾燥しているので、浅い対流は抑制されるが、下層
の収束は強まる(対流雲衰退の際の蒸発冷却による)ため、
対流雲は一気に深く発達できる。
# 対流雲が深く発達する場合に乾燥気塊の存在が重要で
# あり、乾燥気塊と湿潤気塊の境界において深い対流雲
# が発生するというのは、中村先生の主張でもあります。
この場合、凝結高度は高く、より高い高度で凝結の潜熱が
解放されるため、対流圏中層での上昇気流の風速が強まり、
融解層上部まで輸送される水蒸気量が増える。融解層より
上部で一気に凝結して雲水が形成され、霰に取り込まれる
ため、発雷が観測される。
(2) アジア的対流雲の発達過程
通常の「梅雨前線的」な降水は、下層と中層が十分に湿っ
ているために下層において水蒸気が凝結してしまい、高度
が低いうちに降水として(暖かい雨過程)地上に落下して
しまう。このために、融解層よりも高い高度まで到達でき
る水蒸気量が決定的に少なくなる。冷たい雨過程が全く効
かないことはないだろうが、降水の中心は暖かい雨過程で
あろう...
今回、清水くんからの報告にあったケースを検証すると...
(a) 下層収束は弱い(おそらくは下降気流が弱い、つうことは中層
は湿っていると考えられる)。このことは典型的なアジア的対
流雲の発達過程の条件であると考えられる。むしろ、湿った条
件において大規模上昇流が存在すれば、広い範囲で層状的な降
水エコーが観測されるだろう(清水くんの報告に合致)。
(b) 雷が観測されたということは、おそらくは強い上昇気流が発生
したのでしょう。問題はこの強い上昇気流が何によってもたら
されたかということです。
ここで清水くんに訊きたいのは、発雷は連続して長い時間に渡って
発生したのか、短い時間内だけで発生したのか(一つの対流セルか
らもたらされたのか)ということですね。
(c) 雷が連続して観測されたとすれば、下層で「常に」強い収束が
必要となりますが、これは(a)の条件と矛盾しますね。一般場に
強い収束が見られないのに(偶然、対流システムとして場を改
変し、一発だけ強い収束を作ったというのはあるかもしれない)
発雷をもたらすような深い対流が発生した過程は理解できませ
んね。
# 偶然できた深い対流であるとすれば、それはそれで、
# なぜ出来たのかの発達過程を明らかにすることも興味
# 深いテーマですよね。
今回のケースはアメリカ的でもアジア的でもない現象かもしれませ
ん。もしくはアジア的な発達過程をもう少し練り直さなければなら
ないかもしれません。詳しくは清水くんの解析を待ちたいと思いま
すが、彼の解析に資することのできるようなコメントを出し合える
と良いと思います。我こそはと思う方は、篠田の視点にコメントを
くださいませ。よろしくお願いいたします。
ではでは。
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Taro Shinoda <[email protected]>